欧州のファッション誌と日本の雑誌との一番の違いとはーー
海外の雑誌が久々に読みたくなったというマリさん。欧州のファッション誌と日本の雑誌で何が違うかといえば――。(文・写真=ヤマザキマリ)

久々に海外の雑誌が読みたくなって

久々に海外の雑誌が読みたくなったので、都内の書店でイタリア版とフランス版の『ヴォーグ』を調達した。

『ヴォーグ』レベルのファッション誌に掲載されている写真は、気鋭のカメラマンによるアーティスティックなものが多い。

貧乏画学生だった頃は作品のヒントになるので、食費を切り詰めてもこうした雑誌をよく買っていた。つまり、私にとってのファッション誌は、モデルたちが着用している衣服を見るためのものではなく、写真集としての要素が強い。

商品カタログ的な志向がある日本の婦人雑誌に比べ、欧州の場合、モデルも、彼らが身につけている衣服も、そして背景も、すべてはカメラマンが表現しようとしている世界観の一素材であり、読者たちも私と同様、半ば写真集を眺める感覚でファッション誌を読んでいる傾向が強いように思う。

日本の場合は、写真のモデルたちを眺めつつ、こんなふうになりたい、こんな着こなしをしたい、という願望を読者に抱かせる効果があるが、たとえば『ヴォーグ』の人間離れした10頭身の肢体にドラマチックなポーズのモデルを参考にしようと思う人がどれだけいるかという話である。

ひと口にファッション誌と言っても、その読まれ方には国によってこうした差異がある。

(撮影:ヤマザキマリ)

日本の雑誌との一番の違いは、欧州のファッション誌は対象年齢の設定が定かではないという点かもしれない。たとえば、今回買ったイタリア版『ヴォーグ』の表紙は71歳の女優のイザベラ・ロッセリーニだが、その顔には細かい皺が刻まれていて、レタッチはいっさい施されていない。