このままで美しい

表紙の文言も「BELLA COSI(注:正しくはIにアキュート・アクセントが付く。このままで美しい、の意)」のたった一言。

そういえば、年齢を重ねた女性の顔というのは、そもそもこういうものだよな、としばらくイザベラの顔にうっとり見入ってしまったが、確かに、揺るぎない意思を持ったその眼差しも、柔らかい微笑みも、皺があるからこそ引き立つ美しさだと言える。

表紙をめくれば相変わらずハイブランドの煌びやかな広告が続き、若いモデルたちが大胆なポーズでグラビアを彩っている。雑誌の後半には表紙を飾ったイザベラ・ロッセリーニの特集が掲載されているが、1ページは丸々テキスト、次ページは1枚の写真だけ、という展開が数ページ続く。文字量としてもなかなかの読み応えである。

イタリアにいる時は、私が読み終えたファッション誌はたいがい、私より若い小姑と私より18歳年上の義母に回す。彼女たちが読み終わると、数年前までは、当時100歳近かった義母の母と姑が読んでいた。裸同然の姿でポーズを取るモデルを指し、「嫁に行けないよ、この娘は」などと茶々を入れつつ、楽しそうにページをめくっていた。

彼女たちにとってのファッション誌は目の保養であり、時代とともに移り変わる美的感覚の参考書なのである。

何歳だから、どんな職種だからこうでなければならない、といったような固定観念の括りや縛りも緩やかで自由な世界では、皆元気に年を取っていく。


歩きながら考える』(著:ヤマザキマリ/中公新書ラクレ)

パンデミック下、日本に長期滞在することになった「旅する漫画家」ヤマザキマリ。思いがけなく移動の自由を奪われた日々の中で思索を重ね、様々な気づきや発見があった。「日本らしさ」とは何か? 倫理の異なる集団同士の争いを回避するためには? そして私たちは、この先行き不透明な世界をどう生きていけば良いのか? 自分の頭で考えるための知恵とユーモアがつまった1冊。たちどまったままではいられない。新たな歩みを始めよう!