「人としての命を出し惜しみなく懸命に生きてきた人の死は、残された人を前向きにする」(写真:ヤマザキマリさんのインスタグラムより)
誰にも必ず訪れる「老い」「死」。実際、年齢を重ねるごとに、体に不調が現れたり、身近な人の死に触れたりと、悩みや不安は尽きません。「寿命が何歳であろうと、その時までを思い切り生きていけばいい」と語るのは、漫画家・東京造形大学客員教授として活躍するヤマザキマリさん。マリさんいわく「人としての命を出し惜しみなく懸命に生きてきた人の死は、残された人を前向きにする」そうで――。

息子への伝言

私が死んだ時にはどうするべきか、息子には時々リマインドしています。葬儀はさっさと家族で済ませる。交通事故など不慮の死以外、病気などで亡くなった場合は、埋葬なり、どこかに散骨なり、全て終わってから周囲に告知。

表現者は死ねば話題になるし、ビジネスにも利用されるから、例えばもしメディアからの「ヤマザキマリの人生を振り返る」といった類の依頼は断ること。

P C は中身を確認せずに全て破棄。リサイクルで使えそうなもの、誰かの役に立ちそうなもの、書籍類以外は全て破棄。猫や昆虫の面倒は息子が引き受けること。

遺言状にこうした事柄の諸々を記しておくのでそれを確認し、イタリアの家族と揉めないように。

息子は意外と毎度しっかりそんな私の言葉に耳を傾け、不明なことがあれば問いただしてきます。私のように国際結婚をしている場合はとくに、自分の墓をどうするかを含め、死については積極的に話しておくべきだと思うからです。

「まだ全然元気なのに、もう今から死んだ時の話を息子さんにするなんて」という反応をされる時もありますが、関係ありません。むしろ、今知っておいてもらうことで、私も安心してこれからの人生を過ごすことができるというものです。