「私が歌っていきたいのは、日本の風土や季節、人の心の移ろいをそっと掬いとるような歌」

「インターナショナル」でありたい

いま放送しているドラマ『コタツがない家』の主題歌としてお声がけいただいたのが、「ダメ男数え唄」。「素敵な女優さんだなあ」と思っていた小池栄子さんの、民放初のゴールデンタイム主演作と聞き、応援したい気持ちでお受けしました。

脚本家の金子茂樹さんが作詞も担当していらっしゃって、コミカルなドラマの内容そのまんま。世の女性たちに「頑張れ!」というエールを込めて歌っています。

ドラマを観ている方で、主題歌を歌っているのが私だと気づかない方もいるんじゃないかしら。それもいいな、面白いなと思います。石川さゆりだと知った途端、「演歌ね」というフィルターがかかってしまうでしょう。

「ウイスキーが、お好きでしょ」のときも、CMの画面に名前を出さないようお願いしました。でもあまりに多くのお問い合わせをいただいて、後日「SAYURI」とだけ出すようにしたのです。

演歌の世界観は大切にしつつ、演歌のジャンルにとらわれすぎない音楽づくりも目指してきました。だって世の中はこんなに面白い音楽が溢れているのだし、いろいろなものに目を向けないのはもったいないですから。

だけど先日、若者たちから聞いたことには、いまは歌を聴いていて日本語が聞こえすぎると気持ちが悪いんですって。私には想像を絶する意見だったのだけど(笑)、うちの娘からも「お母さんの歌は、言葉が聞こえすぎるんだよね」と言われたことがあります。

じゃあそういう彼らが好きな音楽を聴いてみると、歌詞でちゃんと素敵なことを歌っているんですよ。むしろ私が歌っている内容と変わらないじゃんって思う(笑)。でもその言葉が、リズムやメロディのなかに溶け込んでいないと受け入れられないみたい。

単語が途中で切れても、本来のイントネーションと逆になっていても、言葉が音に乗って心地よく感じられることが大事なんでしょうね。

それでいて、私の歌を新鮮だと言う若い人もいるのだから不思議(笑)。ユーチューブを通じてファンになってくださった若い方がコンサート会場に増えているのです。

私が歌っていきたいのは、日本の風土や季節、人の心の移ろいをそっと掬いとるような歌。それが、いつの時代にも通じる「インターナショナルなもの」として受け止めてもらえると思っています。