気がかりは、世界の子どもたちのこと

最近「越後」という曲を出しました。瞽女さんは室町時代から昭和48年まで、村から村へ三味線一本で歌いながら旅をする盲目の芸人です。

新聞もテレビもSNSもない時代に、村人たちは「そろそろ瞽女さんがくるころだね」と季節の訪れを感じて待ちわび、瞽女さんは「あそこの家で火事があった」「隣村ではこんな病気が流行ってるから気をつけなさい」なんてニュースも届けてくれたそうです。

たくさんの情報が一気に放たれては消えていくいま、みんなで一緒に喜び合える歌の届け方をしたいと、この曲を歌いながら考えます。

ただ、考えてるだけじゃ、なにも前へ進みませんよね。私は戦後生まれですから、戦争の本当の悲惨さを身をもって知っているわけではありません。でも私たちが次の世代に伝えていかなければならないことがある。

世界中で戦争が続いて、人間ってなんて愚かな生きものなんだろうとニュースを見ながら胸を痛めるなか、いちばん気がかりなのは、世界中の子どもたちのことです。どんな時代であっても、どこの国で生まれようとも、子どもたちはみんな幸せに大人にならなければいけない、と私は思います。

そこで、21年の紅白でも共演した音楽仲間のKREVAさんや亀田誠治さんと、「愛されるために君は生まれた」という歌をつくりました。CDにはせず、デジタル配信のみ。曲が再生されて聴いていただけたら、その収益が私たち制作側ではなく、子どもたちをサポートする団体に寄付される仕組みになっています。

デジタル配信は私にとってはじめての挑戦でした。最初戸惑う方はいらっしゃるかもしれないけれど、スマホで気軽に聴けますし、一度登録すれば過去の私の楽曲も出てきますから、思いがけない曲との出合いがあって楽しめると思います。

でもね、よくも悪くも、私たちみたいに目立つ立場の人間が言い出しっぺにならないと。世の中には目立たないけれど頑張っている人が大勢いらっしゃいます。「歌い手になにができる」という思いもありますが、微力でも私の歌ってきた音楽で、困難な日々を過ごす人たちの役に立てたら、そして皆さんの心を繋ぐことができれば、と思っています。