昭和、平成、令和と時代とともに日本の歌謡界を牽引してきた歌手五木ひろし。長い芸能生活の中で、多くの歌手や俳優、文化人、政財界の要人と交流を深めてきた五木ひろしだが、今回から五木ひろしが出会った昭和の大スター秘話を紹介する。
今回登場するのは五木ひろしより17歳年上の俳優高倉健。いったいどんな接点があり、どんな交流があったのだろうか――。(構成◎吉田明美)

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男ならみんな憧れる健さん

僕は高倉健さんの映画が大好きでね。福井から歌手を目指して京都に行き、その翌年上京したころは、いわゆる渡世人の映画全盛の時代でした。深夜映画もどこでもやっていて、仕事が終わって夜中によく見に行きましたよ。

本当にかっこよかったなあ。男ならみんなあの健さんの姿に憧れるんじゃないですか。無口なのに義理人情に厚くて、本当にかっこいいよね。なぜか映画館から出てきたらみんな健さんになりきっていて、肩で風を切って歩いていたもんです。(笑)

一番最初に個人的にお会いしたのは、雑誌の対談だったんです。僕はすでに五木ひろしとしてデビューしていて、「僕が逢いたい人を訪ねる」という企画で僕から「高倉健さん」と指名させていただきました。本当に会えると思うとうれしいのと同時に、大スターですからどんなに怖い方だろうと、緊張しながら東京の東映撮影所に伺いました。

健さんはちょうど「網走番外地」の撮影中でね。そこの事務所で対談が行われることになっていたのですが、とにかくびっくりするほど頭の低い方でした。本当に包み込むようにして迎えてくれて、第一声が「五木さんの歌が大好きです」。

感激しましたね~。それで一気に打ち解けました。健さんをご存じの方はみんなおっしゃいますが、本当に誰に対しても気を遣うし、えらそうにしない本物の大スターだなあと思いました。取材が終わって帰るときにも、わざわざ事務所の出入り口まで見送ってくださったんです。大スターである以上に人間として温かい方で、ますます大好きになりました。