偶然の一致が結んだご縁
それでもお互いに忙しい日々だから会える機会はなかなかありません。ところが、僕がたまたま入った洋品店が気に入ってそれから何度か通うようになったのですが、なんと、健さんがそこの上得意のお客さんだということがわかったんです。そして、ある日、偶然お店で一緒になって、隣の喫茶店でお茶でも飲もうということになりました。
あちらも一人、こっちも一人だったんです。
健さんは、大のコーヒー党で一日に何杯もコーヒーを飲んでいらした。それでいろいろな話をしました。健さんはああ見えてちっとも無口ではなく、よくお話になるんですよ。それをきっかけに、ときどきそのお店で会っては、隣の喫茶店で話すという機会が増えました。
健さんとは本当にいろいろな話をしました。ちょうどそのころ、70年代に入り健さんは独立なさって、イメージを変えるために必死だったころのことです。東映にいたら、任侠映画にしか出演できなくなってしまうという危機感もあったのだと思います。この先の俳優人生をどう歩んでいくかということに葛藤していらしたんですね。苦しい胸のうちを聴かせていただいたものです。ひとつのイメージがついてしまうとどれだけ大変かということを思い知りました。