行きたいところに目星を
さて、バスは進み、鶴岡八幡宮が近づいてきた。
東京からどうやって進むのかと見ていると、高速を降りて、狭い山道をぐんぐん進んでいく。いつも私が通るコースは電車や江ノ電、ロケバスで海沿いから向かってくるので、このルートは新鮮だった。
途中、バス同士が出会ってしまい、こちらのバスがくねった山道をバックするという事態にも見舞われたが、さすがのドライビングテクニックで切り抜けた。この瞬間、目的地が近づいてテンションの上がる乗客たちから、拍手が起こる一幕も。
さて、目的地はほとんどが1~2時間設定の観光である。ここで注意したいのが、そこそこの下調べは必要だということ。バス内で簡単なガイドペーパーは配られるけれど、距離の間隔を把握していないと、集合時間に遅れることになる。この日のコース、私が鶴岡八幡宮、鎌倉小町、大仏、長谷観音までは何度も行った経験があるので、母を迷わせることなく案内ができた。
ただネックは江ノ島にあった。ここはヨットハーバーで撮影をしたことしかなく、神社や観光は初体験。なんとなくネットの観光案内はチェックして「縁結びに効果があるのね」くらいは、予習したが、なんとなるだろうと、突然のケセラセラ精神を発揮。が、当日は珍しいほどの強風で、海が荒れまくっていて歩きにくい。目的にしていた海苔羊羹の店も、バスの駐車場からはるか遠くと現地で気づいて、あきらめる羽目に。
そのうえ、この土地には鳶が多かったことを、現地で知る。観光客が手に持つ食べ物を狙い、超低空飛行で襲ってくる。私もこの被害に遭ってしまい、江ノ島神社で悲鳴を上げた。この世の動物で、鳥類が一番苦手なのに、まさか鳶と至近距離で目を合わせることになろうとは……。敵が来ることを下調べさえしておけばと、自分を恨んだが、母と「良い思い出」だと笑った。