「着る」「装う」、服にはちゃんと“役割”がある

ここで、ファッションの歴史を遡(さかのぼ)って簡単にご説明しましょう。

原始時代、人間は「暑さ寒さから身を守る」ために、動物の皮などを服として身にまとっていました。

『「センスがいい人」だけが知っていること』(著:しぎはらひろ子/青春出版社)

その後、集団ができて社会活動が営まれるようになると、人間は「何をしている人かがひと目でわかるような、特別な装飾」を服に加え、自分が何者であるかを周囲に示すようになります。

身を守るために「着る」という当初の働きに、身分や立場を示す「装う」という働きが加わったことで、服は大きく発展することになりました。これが、ファッションの成り立ちです。

つまり、着ている人がどういう人間なのか、またどういう身分や立場にあるのかを、言葉を使わずひと目で伝えられるように発達したものがファッションなのです。

「太陽王」といわれたフランス国王・ルイ14世の時代に、王侯貴族が金銀宝石やシルクなどで贅沢に着飾っていたのも、自らの地位や権力を示すためでした。

実は、貴族や庶民などという階級がなくなった現代でも、衣服が立場を表すという流れは変わっていません。

ファッションはこの「装う」という歴史の上に成り立っています。学生服やさまざまな職業の制服、冠婚葬祭用の礼服からモテ服まで、ショップに並ぶ多くの服はすべて「装う」という働きから目的別に細かく分けられているのです。そして人は、相手のことを「着ている服」でどういう人か認識しています。

「えっ、服だけで!?」と驚いたかもしれませんが、シンデレラがドレス姿だから舞踏会に入れたように、あなたも初対面の人に会ったとき、服装などの外見で「きっと、こんな人なんだろうな」と、自分の感じた印象でその人を認識していませんか?