思いを込めすぎては前に進めない
実家の片づけがしんどいのは、捨ててよいのかどうかひとつひとつのものに悩んでしまうから。また、自分は「こんなのいらないだろう」と思っても、親はそう思っていない。親子だからといって、子どもの思い通りにはならないことがほとんどです。
整理収納アドバイザーになるために最初に学んだのは、「人の考えを否定しない、自分の基準を押しつけない」ということ。この考え方が実家の片づけに大いに役立ちました。
母は自宅療養中、私に片づけを任せるのを嫌がって、「自分で片づける」と言っていました。母にとっては誰かに手伝われると、「またこんなもの買って!」と責められるような気持ちになるのでしょう。母が亡くなったあとの片づけでも、その気持ちは尊重しました。
母には雑貨屋さんを営みたい夢があり、驚くほど多くのものがありました。おそらく母にとってはどれも大切なものだけれど、ひとつひとつ吟味していては、私が一生かけても片づけは終わりません。主観的に「かわいい」「美しい」「楽しい」と感じられるものだけを残し、それ以外は処分しました。選びながら悔やんだのは、母が元気なうちに特に大切なものを聞いておけばよかったということ。それだけを残せばよかったのですから。
「片づけ」のなかでもっとも大変な作業は「処分」することでしょう。わが家には祖母と母、それぞれの婚礼ダンスがありました。母のほうは業者に引き取ってもらって約3万円。祖母の分は友人にノコギリで解体してもらい、粗大ごみで出して約2500円。やってみるとそんなに難しくはありませんでしたが、これは体力と予算との相談です。
大型の家具やベランダの土など、重いものを1階まで運ぶのも重労働。父や友人に手伝ってもらい、リサイクルセンターや粗大ごみセンターに何度も運び込みました。
片づけのあとは父流にカスタマイズ
親の意見を聞きながら家を整理しても、すべては行き届かないもの。使う人が使い勝手よく整え直して、より住みやすくなるのです
台所のタオルかけ、父はまっすぐかけるよりも、タオルの一部を突っ込むタイプが好きなよう。父のよく使うものは限られているので、それを使いやすい場所に配置・収納・カスタマイズすることで、きれいな状態を保っています(左がカスタマイズ前・右がカスタマイズ後)