画面の隅から隅まで目が離せない
この映画の冒頭、皇帝溥儀の即位式は、映画史に残ると言われているそうだが圧巻だ。
式典だけでなく城外の人々の暮らしの貧しさ、3人が板で首を繋がれた罪人の姿まで映し出され、画面の隅から隅まで目が離せない。
皇帝溥儀(1906~67)が2歳半で即位してから61歳で市井の人として死没するまでの激動の人生を、3人の子役とジョン・ローンが演じた。どの子役も「よくこんなに似たきれいな子を」と溜息が出るほどだし、ジョン・ローンの素晴らしさはいうべくもない。
即位の時、母を亡くした悲しみで紫禁城を出ようとするが止められてしまう時、中国共産党により紫禁城から追放される時、満州国皇帝の座を引きずり降ろされる時、繰り返されるのが、坂本龍一の見事なテーマ曲。悲しき皇帝の背負った歴史の重み、孤独と栄華が重厚なオーケストラで奏でられ名シーンを見事に彩る。
皇帝溥儀はたいそうインテリで先進的な人物だったようで、英国人家庭教師ジョンストンの影響を受けて紫禁城の近代化を図り、辮髪を切り、被災地などへ慈善活動を匿名でしたという。関東大震災の時も多額の寄付をするなどして日本の皇室と親しくなり、紫禁城の追放の後は日本大使館を頼り、やがて満州国皇帝への道を進む。
敗戦により罪人とされて収獄されるシーンから始まって過去の栄華へと遡る構成は見事。ラストシーンはこれから観る人のため詳述を避けるが、涙を止めることができない。