偉大なる芸術家に、心からのご冥福を

「あまりに寂しい老後」と「青年期の溥儀のスタイリッシュさ」の両方を演じたジョン・ローンは素晴らしい俳優だと思う。時代がちょうどギャツビー・スタイルやチャールストンの流行に重なったこともあり、彼のふるまいも服装も、『華麗なるギャツビー』を連想させる。包龍と言われる漢の民族衣装も似合うし。服装の変遷、彼に付き従う美しき皇后と側室の姿も見どころ。

そして坂本龍一だ。関東軍の特殊工作を行い、満州映画協会の理事、溥儀の妻に「満州国の実質の支配者よ」と言わしめた甘粕正彦役で登場している。彼はまず役者としてこの映画に参加。撮影中に「明日の撮影の曲を書いてくれ」等とふられたのが実はテストで、映画完成後に作曲への正式なオファーを受けたという。2週間であの重厚なオーケストラを作曲したそうだから、舌を巻く。役者としても素晴らしい才能と容姿に恵まれていたと思う。彼が望むなら俳優としても成功できたろうが、人生はそんなに長くないという事か。

喉頭がんが見つかってからも坂本は多くの楽曲を残し、最後まで創作をし続けた。『ラストエンペラー』の後、ベルトルッチの『シェルタリング・スカイ』にも楽曲提供したが、こちらは楽曲以外、正直退屈でお勧めしない。ベルトルッチは『ラストエンペラー』で燃え尽き症候群になっていたのではあるまいか。ベルトルッチ作品ならば『暗殺の森』や『ラストタンゴ・イン・パリ』を観た方がいい。

P.S. この機会にぜひ坂本龍一全作品を聴いてほしい。末筆となるがこの偉大なる芸術家に、心からのご冥福をお祈りしたい。