左:ジャック・ラクロワ 右:コゼット・アルクール©️Studio Harcourt Paris
漫画家、作家、コメンテーターとして幅広く活躍していたさかもと未明さんは、2006年に膠原病を発症し、手指が使えなくなるかもしれない状況に。「表現」の一つとして歌手としての活動を開始した。その後、病とつき合いながら絵を志して2017年に画家デビュー、着実にキャリアを重ね、2021年、2022年にはフランスの権威ある絵画展サロン・ドトーヌに2回の入選を果たす。何度もフランスを訪れる中で出会ったあるスタジオとその歴史に魅了され、ポートレイトの撮影を決意。贅沢ではあるが唯一無二の体験を、ルポしてもらった。

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こんなバーグマンは見たことがない

アルクールの写真が私は好きで、結局パリで撮影までしてしまったが、それにははっきりとした理由がある。日本のブロマイドやグラビア撮影と、フランスのそれは、歴然と違うからだ。それは「日本より西欧」という事とも違う。アメリカの俳優の写真がものすごく好きかというと、そうでもない。特別にフランスの、Harcourtのそれが好きなのだ。

一番わかりやすい例として、イングリッド・バーグマンの写真をあげよう。ハリウッドで活躍したスウェーデンの女優で、『カサブランカ』が特に有名。清純な好感のもてる女優さんというのが一般的イメージだし、アメリカで撮られた多くの写真は、基本的に健康的で感じがいい。ものによっては、マリリン・モンローを思わせるものさえある。つまりはその国の男性が好む「女性の理想像」というものが、写真に投影されるのだろう。

イングリッド・バーグマン©️Studio Harcourt Paris

しかし、フランスのアルクールで撮影された彼女の物は、好感度などを考えていない感じだ。最初、ジャンヌ・モローの若い頃かと思ったくらいに、強気な女をおもわせる。口はへの字に曲がっているし、視線もどきりとする強さがある。こんなバーグマンは見たことがない。