断絶の時代

デーブ なくなってきた。前は脱サラっていう言葉があったんですよ、脱サラリーマン。知人が何人かアメリカに住んでて、どうしたんですかって聞くと「いや、会社いたけども脱サラして辞めちゃって」って。

中野 今は聞かないですよね。転職するか、FIREするか。

『ニッポンの闇』(著:中野信子・デーブ・スペクター/新潮社)

デーブ 今会社辞めるの恥ずかしくないですもん。前は定年前に会社辞めただけでご近所から「ちょっと、あの方、どうされたのかしら」。ひそひそ。

中野 いろいろ変わっている時期ですよね。かといって日本的な終身雇用も、今さら元に戻れるか。

デーブ 多分無理でしょうね。

中野 企業の体力がもうそんなにないし、終身雇用があると何が一番困っちゃうかというと、人口ピラミッドが下に向かって細っていくので、維持するためには若い人は馬車馬のように働かないとダメですよね。

でもそんな働き方できないので3年どころか3日で離職しますよね。企業体が成立しなくなるので元に戻りようがない。じゃあ日本人としての共通の認知基盤というのが、何によって保持されるかというともう同じ言語を使ってるというぐらいしかなくなるかもしれないですよね。

デーブ 日本語ね。

中野 すでにその共通基盤も違ってきちゃってるから、人によって言葉の受け取り方もさまざまになってますし、断絶の時代というのが来るんだろうなとは思います。

そういう意味では、その断絶の時代を面白いと思えるか、自分と違うものをいいと思えるかというのが勝負なのかなと。

相手が自分と違った時に喧嘩しちゃう人と、違うということを使って儲けましょう、得しましょうという人と、その勝負になってくるんじゃないですかね。