ZEN大学などのオンライン大学の可能性
――オンライン大学のZEN大学を、ドワンゴと日本財団が2025年設立をめざしています。地方大学や女子大にどのような影響を与えるでしょうか?
オンライン大学の可能性は大きいと思います。特にZEN大学は、既に運営されているN高校、S高校が多くの生徒を集めていることもあり、注目されていますね。N高校、S高校では授業をオンラインで展開することに加え、全国各地でリアルな体験を通じて学べるような工夫もされています。ZEN大学はまだ設置認可申請中ということもあって詳細のすべては明らかではありませんが、同様にオンラインとリアルの良い面を組み合わせた教育を展開されるのかなと期待しています。
こうしたオンライン大学は、地方大学や女子大学のみならず、程度の差はあれ日本の多くの高等教育機関に影響を与えるでしょう。「地元に通える大学がなく、遠方に進学する経済的な余裕もない」「スキルを磨きたいが、地元の大学には学びたい専攻がない」といった方にとっては、オンライン大学は新たな選択肢になり得ます。社会人が働きながら学ぶ方法としても有力ですね。ですので、周囲にライバルがいないことにあぐらをかいて経営の工夫をしてこなかった大学や、社会人が学びたいと思える教育を提供してこなかった大学などにとっては、ライバルになるかもしれません。
現時点では、「できるならリアルなキャンパスで学びたい」という方が圧倒的に多いので、既存の他大学はそうしたニーズに応えられるよう、教育メニューの改善や経済的支援の充実、安価で安心な学生寮の整備など、オンライン大学に負けず選ばれるような工夫をした方が良いかもしれません。既存の大学が授業をオンラインで展開したって良いはずです。
職員および職員組織は、自学を取り巻くマーケットがどのように変わるのかを真剣に見ておいた方が良いでしょう。「自分の仕事は与えられた事務処理だけ」というわけにはいきません。これまでと同じやり方で、先輩から教わった仕事だけをこなしているようですと、大学の将来も、職員のキャリアも危うくなってしまいます。
なおオンライン大学の広がりにより、結果的に地方の小規模大学・短大などが募集停止に追い込まれる可能性はゼロとは言えません。そうなると若者の流出が加速する、地元企業への人材供給が滞るなど、地域にも多大な影響が出るはずです。地域創生という観点で、地元の自治体や企業等と協働するような仕事も、今後の地方の大学職員には期待されるのではと思います。
『大学職員のリアル-18歳人口激減で「人気職」はどうなる?』(著:倉部史記・若林杏樹/中央公論新社)
大学職員は「年収1000万円以上で仕事も楽勝」と噂の人気職だが、はたして真相は?
大企業と似たような仕事内容がある一方、オーナー一族のワンマン経営で、ブラック職場の例もある。国公私立でもまた事情は千差万別。それでも大学職員になりたい人、続けていきたい人、辞めようかどうか迷っている職員のための必読書。