(イラスト:古谷充子)
2023年は、急激な物価高騰に悲鳴を上げた方も多いのでは。この状況は続くのか、第一生命経済研究所の首席エコノミストとしてメディアにも多く出演する経済の専門家・永濱 利廣さんに聞きました。(構成=南山武志 イラスト=古谷充子)

物価高に対する減税政策の効果は?

2023年は、生活の厳しさを実感する1年でした。端的にいえば、それは「物価の上昇に、給料の伸びが追いつかなかった」ことが原因です。

日本の消費者物価指数(日常的に購入する商品価格の動き)は、22年に比べ3%ほど高く推移しました。値上がり率の3分の2を占めたのが、生活に欠かせない食料品です。ガソリンや電気・ガスなどエネルギー価格の上昇も家計を苦しめました。

それでもこれらの価格は、補助金など政府の経済対策によって抑えられているのが実情。対策がなければもっと大変なことになっていたでしょう。

物価高の要因は、2022年2月に始まったロシア・ウクライナ戦争。両国とも穀物の主要な生産国で、特にロシアは天然ガスなどエネルギー生産でも大きなシェアを持っていました。開戦でこれらの価格が急騰。円安で輸入価格が上昇したことから、急激にインフレが進んだわけです。

政府はエネルギー価格抑制策をはじめ、物価高対策を講じてきました。現在、岸田内閣が打ち出しているのは、「所得税を定額で1人あたり4万円減税」「住民税非課税世帯には1世帯あたり7万円を給付」という減税・給付案です。

減税自体に異論はありませんが、私見を述べさせていただけば、消費税、なかでも国民の多くが困っている食料品の課税を見直すのが、最も理にかなっています。例えば、食料品にかけられている軽減税率の8%を当面ゼロにする。そうすれば、家計は大助かりでしょう。

そもそも、所得減税で浮いたお金や給付金の7割以上は貯蓄に回るのが、過去の例からも明らか。一方、消費減税なら、実際に物を買わないと恩恵を受けられません。景気を温めるという点でも、効果は大きいはず。

しかし、「苦労して上げてきた消費税の税率は下げたくない」という政治的思惑もあって、消費減税のハードルは高いのです。