親子関係で気をつけるべきこと

次に、親子関係もさまざまな要因によって紛争へと至ることを確認していこう。

現代は戦前の家制度が崩壊して久しい。そのため家制度において「家長」という文字通り家庭経営者だった父は(ただし当時は家長が制度的に地位を守られていたため、実際に家庭の問題を自分の頭で解決する必要性は現代よりも小さかったといえる)、現代では「サンドバッグ代わりの中年」くらいの地位に堕してしまっている。

『世界は経営でできている』(著:岩尾 俊兵/講談社)

今では娘が父親に真空飛び膝蹴りを食らわせるような家庭も多いという。

母もまた家制度という縛りから脱け出して自由になれたとはいえ、今度は家庭をいかにして経営していけばよいか分からず狼狽している。性別問わず子が親に対しておこなう家庭内暴力のニュースに心を痛める人も多い。

現代は強い法的な縛りによって家族が一致団結する時代ではない。だからこそ個々人それぞれが家庭経営の考え方を持って親子の問題を解決していかないと、子殺しや親殺しといった最悪の悲劇にさえつながりかねないのである。

このとき、親子という関係性がこじれる一つの原因は「親が子の生き方を決めつけてしまう」というものだ。たとえば典型的には、勉強して、いい学校に入って、いい会社に入って……というルート以外を親が認めようとしないなどである。

もちろん、子は親よりも社会を知らない。子は親の役割を経験していないが、親は子だった時代を経験している。そのため人生の先輩としてある程度は親が子に道を示す必要はあるだろう。

だが「レモンを食べている状況を想像しないでください」と言われると唾が溢れてきてしまうように、何かをしないように強制することで逆にそちらに意識が向いてしまうこともよくある。夜更かし、外泊、飲酒、喫煙、深夜に食べるカップラーメンなど、禁止されればされるほど魅力的だ。

しかも、こうした禁止を強制している親自身が家庭には居場所がないからと毎日深夜まで飲み歩いていたり、ときには不倫相手の家に泊まり込んでいたりするのだから(こんなことを繰り返すから家庭に居場所がないのだが)、むしろ「子は親の背中を見てちゃんとその通りに育った」というべきである。