料理の先生は「料理本」だった

あまり細かいことを覚えていないのは、きっと「1人」から「2人」の生活になった人生の大変化、全身全霊で受けて立とうとガムシャラだったのかもしれない。なんだかやたら「困った」ことばかりで、1人で大騒ぎしながら乗り越えていた。

1人暮らしは長かったのにまともな料理を作ったこともなく、家事全般あまり得意でなかった女が突然結婚してしまったからだ。頼りたい親は遠く、間違っていようが破れかぶれで家のことをやっていたあの頃。
ひと月キャンプで夫が不在でも、1人で寂しいと感じる暇がほとんどなかった。

それでも、いろんなことはあとからどうにか、何とかなった一例なので、わたしは結婚する時に最初から何でも上手にできなくても「大丈夫」派である。

我が家のカニ鍋

私の料理の先生は確実に「料理本」だった。
今はYouTubeやTikTokから学べるようだが、あの頃はまだ本やテレビ、実際に教室に通ったりして学んでいた。
私の本の師匠は、栗原はるみさんやケンタロウさん。たぶんこれから初めてお会いすることがあっても「先生!」と平伏してしまうだろう。
この歳になっても私の料理はこのお二人の本の通りの作り方で、ボロボロになった本をいまだに安心のため開きながら料理を作っている。
逆に24年も、すごくないですか。そろそろ完璧に頭に入っていてもよさそうなものを。

わたしは片付けがもともと得意ではないのだが、結婚していきなり夫の住んでいた一軒家に暮らし始め、2人分以上の荷物に囲まれた新生活が始まった。とりあえず1人暮らしの部屋から持ち込んだ自分の荷物を、屋根裏に放り込んだまま…
最後の荷物を解いたのは結婚して5年を過ぎた頃だった。