すべてを懸けた恋の結末
しかし、出産のわずか2週間前、その最愛の恋人を病で亡くしてしまうのです。笠置さんより9歳も若く、24年にも満たない短い生涯でした。
歌手として積み上げてきたキャリアも、自身の命でさえも、すべてを懸けた恋の結末がこのようなことであったとは...。人生は、なんと酷いものか。
次元の違うハナシでありますが、私は結婚を決めた33歳の時、「歌をやめさせて欲しい」と、所属事務所の社長に掛け合いました。女性として、愛する人の子どもを産み育てて生きていく別の人生を心から望んだからです。
11歳の私を見出し、歌手として手塩にかけて育ててくれた社長には当然どやされることを覚悟で参上したのですが、そのとき社長から返ってきた言葉は「後悔はないな?なら、それでいい。幸せにしてもらいなさい。おめでとう」でした。
いま、こうして書いていてふと気づいたのですが、その時の私とあの時の笠置シヅ子さんは、偶然にも同じ33歳。互いに思慮分別があって然りの年齢でした。
引退を許してもらえた私は、その日から約1年を新しい仕事は受けず決まっていたスケジュールだけをこなして過ごしていました。