私は歌いたい
しかし、幼い頃から歌だけを歌って生きてきた私は、時間の経過とともに激しい空虚感を抱くようになって来てついに「ごめんなさい。私は歌いたい」と夫に告げたのです。
「後悔はない」と啖呵を切ったはずなのに、自分自身が恥ずかしくて、申し訳なくて、居た堪れない気持ちでした。結局、私は、私を捨てることができなかったのです。
夫から「そう言うと思ったよ。君は歌いなさい。君の歌が僕たちの子どもだと思えばいい」と言ってもらえたとき、感謝とともに初めて「あぁ、私は歌うことが本当に好きなんだ!」と気づきました。
歌をやめると決めて、初めて自分のやるべきことに気づくだなんて、なんて皮肉な、いや間抜けな話でしょう。要するに、私と言う人間はわがままなのです。そのわがままをこのように通させてもらえた、幸せな今までの人生だったということです。
人騒がせな結婚の始まりでありましたが、歌手としての人生はそこから大きく変わりました。