現場への影響は?

長時間労働の常態化抑制になるのは事実だが、実際に働く現場にはどのような影響が出るだろうか。

私が運行管理者を行っていた2015年前後は退勤から翌日の出勤までの間隔が8時間ギリギリという勤務はなかったものの、人員不足や急な欠勤による勤務の変更により、結果として退勤と出勤の間隔が8時間ギリギリとなってしまう場合は多々あった。

出退勤の時刻においては夜ラッシュに対応する勤務は21時台の退勤が、朝ラッシュに対応する勤務は5時台の出勤が多いため、8時間の間隔であればこの両方を効率よくこなすことができた。

とはいえ、その勤務はキツいということであれば運転士は断ることができる環境であったし、家に帰ると睡眠時間が短くなってしまう場合には営業所に宿泊できる設備が整っていた。

鉄道乗務員の泊まり勤務は仮眠時間が4~5時間程度だ。

残業を希望しない人が残業せざるを得なくなるなら、場合によっては退職してしまうということもあるかもしれない(写真提供:Photo AC)

そう考えると、バス運転士において12時間労働などの長時間労働に加えて勤務間のインターバルが8時間ギリギリというのが常態化するのは確かに良くないが、労使間合意のうえで8時間のインターバルで勤務できる余地は残っていてもいいのではないかと感じる。

また、残業時間についても、限界まで稼ぎたいという希望で上限ギリギリまで時間外労働をしている運転士は一定数いる。

もちろん従来も拘束時間の上限の規制があるため、1989年の改善基準制定前のような、青天井で残業して年収1000万円を稼ぐということは難しいが、それでもバス会社で稼げるだけ稼ぎたいという考えの人は多い。

1ヶ月の拘束時間の上限が15時間減るのも大きな影響だが、それ以上に勤務間のインターバルが9時間に変更されるのが大きい。

本人が残業を希望していたとしても、勤務間のインターバルに合致する勤務に空きがないと残業を割り当てることができないためだ。