「原磯さんなら、神社のことを何かご存じじゃないかと……?」
河合がこたえた。
「あの人、大木さんとよく飲んでいるんだよね、スナックとかで……」
「スナックですか」
「そうだな」
山科が言う。「あの二人はけっこう親しいみたいだな」
「でも……」
二人に促されるように、藤堂もしゃべりはじめた。「それ、最近のことじゃないですか?」
河合が何度かうなずく。
「そうそう。たぶん、ここ一、二年のことだね」
「アレじゃないの?」
山科が言った。「『梢』にアヤちゃんが来てから……」
「ああ、そうかもな」
阿岐本が尋ねた。
「その『梢』というのは……?」
「ああ。山手通りの向こうにあるスナックですよ。昔はマスターとママの二人でやっていたんだけど、アヤちゃんという若い子がバイトで入ってね」
「あ、原磯さんと大木さんは、それから『梢』に通いはじめたということですか?」
「いやいや」
河合がこたえた。「原磯さんは以前からその店の常連だったんだけど、大木さんがいっしょに行くようになったんだ」
「なるほど……」
「そう言えば……」
山科が言う。「原磯さんが、駒吉神社を訪ねるのを見たことがあるなあ」
阿岐本が訊いた。
「それは、いつのことです?」
「覚えてないけど、そんなに前のことじゃない。一年くらい前かなあ。そのときは別に、気にしなかったんだけどね。言われてみりゃ、ここ一、二年であの二人は急に親しくなったみたいだね」
阿岐本が時計を見て言った。
「あ、すっかり十二時を回っちまいましたね。お話をうかがえてよかったです。ありがとうございました」
「え……?」
藤堂が言った。「もうよろしいんですか?」
「はい。いろいろと教えていただいて助かりました」
河合と山科も肩透かしを食らったような顔をしている。
阿岐本は、田代にいとまごいをして本堂を離れた。
「さて、事務所に戻って飯にしよう」
日村は「はい」とこたえた。