事務所に着くと、阿岐本が言ったとおり、甘糟がいた。今日は仙川係長もいっしょだった。
 仙川係長の顔を見て、日村はうんざりした気分になった。
 阿岐本は、「じゃあ、俺は部屋で昼飯にするよ」と言って、奥に引っ込んだ。
 甘糟が言った。
「ねえ、また中目黒署管内に行ったんだって?」
 日村はこたえた。
「はい。西量寺に行ってきました」
「二日続けて行くなんて、何か企んでいるとしか思えないよね」
「企んでなどおりません」
「また、ありがたい話を聞きにいったなんて言わないよね」
「ありがたいお話を聞きにいきました」
「町内会の役員と会ったんでしょう?」
 当然、谷津から北綾瀬署に連絡が行くと思っていたので、日村はこの言葉にも驚かなかった。
「お目にかかりました」
「何の用で会ったのさ」
「それは私の口からは言えません。うちの代表に訊いてみますか?」
「いいよ。親分になんて会いたくないから……」
「おい、何を言っている」
 仙川係長が言った。「せっかく組長に会わせてくれると言ってるんだ。会ってみりゃいいじゃないか」
 甘糟が慌てた様子で言った。
「今会ってもシラを切られるだけです。もっと、証拠固めをしないと……」
「谷津が知らせてくれたことが証拠だよ。こいつらは目黒区の寺まで行っていったい何をするつもりだったのか……。何が何でも聞き出すぞ」