老人で生まれて、若返っていく

本作は「老人で生まれて、若返っていく」と言う奇天烈な話。スコット・フィッツジェラルドの短編がもとになっている。

そもそも「若返り」という言葉には人類史以来の魅力があるだろう。今や「再生因子」や「幹細胞」を含む化粧品や医療の広告が花盛り、女性ならば誰もが皺に悩み、フェイスラインの崩れを防ぐために努力をするだろう。  

でも「老いることなく死ぬまで若い姿のままなら幸せ」なのか? さらには「若返っていったら幸せ」なのだろうか? そんな人類普遍の「生老病死」の問題を含んでいるから、この物語はこんなにも面白いのだろう。

しかしこの映画は難解ではないし、説教臭くもない。むしろかなり笑え、共感できる。 

主人公ベンジャミンは難産の末に生まれ、母親を死に追いやってしまう。そこまでして生まれてきたのに、見た目は今にも死にそうなジジイ。健康状態から「すぐに死ぬだろう」と言われてしまう。そんな!長生きで元気なジジイもババアも、一杯いますよ!

思い余った父親は彼を憎み、海に捨てようとするのだが、殺しきれずに、彼を老人ホームの入り口に置き去りに。一応深刻なドラマとして描かれているのだが、私と夫は笑ったり、絶句したり、興奮しっぱなし。

そもそも「老人の姿で生まれ、忌み嫌われる赤ん坊」が、なかなか可愛いのだ。私が「ジジイ好き」なせいもあろうが、新生児って元々皺くちゃでジジイっぽいし。見ていて全然違和感覚えません。

なもんで、何の罪もないのに実の父親によって海に捨てられそうになるシーンでは「やめて、信じられない!」と、自然な叫びが漏れてしまいます。そのくらいベンジャミンに感情移入しちゃったんでしょうね。

人間結局、「姿」「年齢」「肌の色」などで差別されたり忌み嫌われたりするのが常。可愛くないだけで、実の父親にさえ捨てられたり、じろじろ見られたり。エピソードのいちいちが「ありそう」な話なので、感情移入せずにはいられません。