ストーリーの交差でしかない私たちの人生

大人になっていく狭間でベンジャミンは人妻と切ない恋をし、真珠湾攻撃に巻き込まれて仲間を亡くし、その後美しい青年の姿になって帰郷。幼馴染のデイジーと再会します。

でも、華やかなダンサー生活に埋没していた彼女とベンジャミンの会話はすれ違うばかり、1度はもう終わったと思われた2人がやがて心をかわすのは、デイジーがダンサー生命を絶たれた時でした。

私自身も「死ぬかも」と思った難病に罹患して死を意識したときに今の夫に会い、結婚しましたが、愛とか優しさって、健康すぎる体や若さの外側にあるのかもしれません。幸運すぎるときは、その価値に気付けない。そして、老いていくとき、若さを失っていくことはある意味救いなんじゃないかと、私たちはだんだん気づかされていくんです。

起承転結もなく、まとまりのないストーリーの交差でしかない私たちの人生。実はこの映画自体がそんな形をとっています。色んな魅力的なエピソードと人物が描かれ、ベンジャミンの人生と交差するけど何れは別れていきます。

最後、ピカピカの少年になったベンジャミンが、老人性認知症で自分が誰かもわからなくなっていく様は圧巻。あふれる涙を抑えることはできません。

がんばって成長して、でもやがて老いて死ぬしかない人間。何のために大きくなるのか?何のために生まれてきたのか? 結果だけ見たら何にも残らないかもしれないけど、美しい愛ややさしさの想いで、心を躍らせた色んな体験が出来たら、人生はすばらしいじゃん?

若返ったベンジャミンと老いた恋人デイジーはそれぞれに死んでいきますが、人生が交差して愛し合うことが何て素晴らしいんだろうと、私たち1人1人の小さな人生がすごく愛しくなってしまうんです!!