写真提供◎photoAC
1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!今回はM-1グランプリ2023の決勝戦、ヤ―レンズのネタのオチとしても話題になった『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』です。(写真・イラスト◎筆者)

理系人間の夫も没頭する名作

「えっ。また見てるのこれ?」
「うん。なんか面白いし、落ち着くんだ」

私の夫は、この連載の為に担当編集からお勧めされた『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』にはまりっぱなし。繰り返し、既に7~8回は見ているんじゃないか。私もこの映画は大好き。見るたびに新しい発見があり、どのパートも面白い。が、彼のハマりっぷりは普通でない。

我が夫は医師で理系人間なので、文学や映画の鑑賞はかなり苦手。色んな名作を見せようと試みたけれど、大抵は(1)「寝る」、(2)「これ誰だっけ」と、クライマックスでにべもない質問をする(ストーリーの把握ができない)、(3)突然DVDをテレビに切り替え、深夜のお笑い番組を見始める(鑑賞の暴力的放棄)といった形に終わるのが常。

その夫がここまで没頭するのだから、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は名作に間違いなし! 一体、この作品の吸引力はどこにあるのか。