稔はすでに西量寺までのルートがすべて頭に入っているようだ。ナビの必要もない様子だった。
日村は車の中から田代に電話をした。
「追放運動の人たちは、まだいますか?」
「ああ、いるね」
「何かお話をなさいましたか?」
「話? してないよ。こっちはいつものお勤めをしてるだけだ」
「今、そちらに向かっています」
「え? 来るのか?」
「様子だけでも見ようと思いまして」
「連中に見つからないようにしたほうがいいな……」
「心得ています。では……」
日村は電話を切ると、稔に言った。
「寺の前に暴力団追放運動の人たちがいるらしい。見つからないように、離れたところに停めてくれ」
「わかりました」
稔は、寺の前にいる連中から死角になる絶妙な位置に車を停めた。
日村は車を降りて、用心深く西量寺に近づいた。なるほど、寺の前に何人かいる。思ったより人数は少なかった。
全部で六人だ。白髪の老人と主婦らしいおばさんたちだ。
プラカードが一枚、サラシみたいな布にマジックで字を書いた横断幕が一枚、それだけだ。
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