義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。

 日村は二人を奥の部屋に連れていった。
 すでに永神と阿岐本が向かい合って来客用のソファに座っている。
 阿岐本が仙川係長たちに言った。
「どうぞ、お掛けください」
 仙川係長は永神の横にどすんと腰を下ろし、甘糟はすっかり小さくなってその隣に腰掛けた。
 日村は阿岐本の脇に立った。
「アニキ。元気そうで何よりだな」
「おめえもな。仕事のほうはどうだ?」
「ぼちぼちだな」
 ごく当たり前の挨拶だが、さすがに組長とその兄弟分だ。日村でさえ圧倒されそうな迫力がある。
「またとないチャンスだ」などと言っていた仙川係長だが、奥の部屋の威圧感がただごとでないことに、ようやく気づいた様子だ。
 甘糟などはすっかりびびっている。