仙川係長と甘糟がそそくさと部屋をあとにすると、永神が言った。
「あんなこと、警察にしゃべっちまって平気なのかい?」
 日村も同じ気持ちだった。
 阿岐本がこたえた。
「なに。隠し事をしたりごまかしたりするとさ、警察ってのはムキになるからね」
「しかし、寺の鐘に苦情が出ているって、マジな話なんだな」
「ああ、そうらしい」
「世も末だな……。で、駒吉神社の件は?」
「ああ。氏子(うじこ)が減って、境内の補修もままならない様子だね」
「西量寺の田代さんも、檀家が減ってたいへんだとおっしゃってたね」
「神社の氏子が減るのは、寺の檀家より深刻だろう」
 日村は思わず尋ねた。
「そうなんですか?」
 それにこたえたのは、阿岐本だった。
「そりゃそうだ。寺の檀家ってのはお布施払ったりするくらいで、寺の援助をしているだけだが、神社を維持していくのが氏子だからな」
「はあ……」
 日村は今一つ、その違いがぴんとこない。
「おめえ、突っ立ってないで、座んな」
「はい」
 今まで仙川係長が座っていた席に腰を下ろした。