「あの人たちは、鐘に文句を言うのとは別の層だ」
「クレームをつけるのは、マンションやアパートに住む、新しい住民だということですね」
「そう。そして、今日集まっていたのは、昔からこのあたりに住んでいる連中だ。この町を守ろうという気持ちが強いんだ。今まで、新しい住民と古い住民は、水と油だったんだが、何かのきっかけでその二つがいっしょにならんとも限らん」
「そのきっかけが、今回の暴力団追放運動だと……?」
「その可能性があるということだ」
「つまり、鐘にクレームをつけていた人々と暴力団追放運動の人々がいっしょになってこのお寺に対する攻撃を始めるということでしょうか」
「最悪、そうなるね」
「それはえらいことですね……」
「なに、そんなことになっても、私は戦うよ。断固戦う」
「なんか、楽しそうですね」
「そうかい?」
「いずれにしろ、私らは姿を見せないほうがいいですね」
「いや、理不尽な追放運動に屈するわけにはいかない。親分さんとは話が合いそうなので、ぜひともまたお会いしたい。いつでも来てくれと伝えてほしい」
 この和尚はなかなか過激だということがだんだんわかってきた。
「わかりました。伝えておきます」