義理人情に厚いヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々舞い込んでくる。今度は町の小さなお寺!? 鐘の音がうるさいという近隣住民からのクレームに、ため息を吐く住職。常識が日々移り変わる時代のなか、一体何を廃し、何を残すべきなのか――。

     10

 田代が言ったとおり、午後五時にはもう追放運動の人たちはいなくなっていた。
 日村は周囲に気を配りながら、本堂を訪れた。
 田代が待っていた。
「やあ、わざわざすまんね」
「いえ、もとはと言えば、自分らがここにやってきたせいですから……」
 二人は本堂の床で対座した。
「気にせんでいいよ」
 田代は言った。「暇な連中がやっていることだから。ただな……」
「ただ?」