午後五時五十分頃に事務所に戻り、日村はすぐに阿岐本に報告した。
「そうかい。いつでも来てくれとおっしゃったんだね」
「はい」
 でも、行かないほうがいい。それは、阿岐本にもわかっているはずだ。日村はそう思った。
「鐘の音にクレームを付けているような連中と、暴力団追放運動が一つになる、か……。おめえ、どう思う?」
「はあ。そうなれば、えらいことだと……」
「なんか、見たところじゃ警察は当てになりそうになかったしな……」
「……というか、警察は暴力団追放運動の味方でしょう。なんだか、ややこしいことになってきました」
「そうかい?」
「そう思いますが……」
「話はわかった」
「あの……」
「何だ?」
「住職に会いに行かれますか?」
「おめえは行くなと言ったのに、様子を見に行ったんだ。俺に行くなとは言えねえだろう」
「はい……」
「そんな顔するな。心配はいらん。今んところ行く気はねえよ」
 日村は、少しだけほっとして部屋を出た。
 

 

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