「決める。」…… 山本一力さん(作家)

言葉は単純だけれども、これを続けるのは大変なんだ。今より一歩先に行くには、本当に「決めて」ないとできない。

ただ、人ってそんなに強いもんじゃないから、すぐに意気地がなくなって、体を丸くして巣籠もりしたいと思ってしまう。ここで中途半端だと、自分を騙そうとして「時間がないだけだよ」というふうに山ほど言い訳をはじめるんだよ。でも覚悟ができてさえいれば、ぐちゃぐちゃ迷っていても「オレ、決めてんだよな」というところにスッと立ち戻れる。

物書きは、始終迷いの連続だ。自分の主張をしたいがために相手を道具にしていないか。本当にテーマに対してのめりこんでいるのか。

それでも毎日続けられるのは「書く」と決めているから。もちろん進まない日もある。その時はいったん休みはするけれども、「書く」という軸はくるっていない。大事なのは「決める。」を決めているか。それを自分に問うことなんだ。

山本一力さん