ブラ、手洗いする?

まずは冒頭で大久保佳代子さんのポッドキャストでも話していた、ブラジャーの洗濯問題について。読者の皆さまは下着に関して、手洗い派だろうか、それとも洗濯機派だろうか? なんと私、ここまでの洗濯に対するズボラ価値観を覆すようだけど、手洗い派。そのすべては下着屋の店員さんからの洗礼にある。

数年前、装着をするとスタイルアップができるという、補正下着のショップに足を運んだ。減量でどうにも体重が減らないのなら、アイテムを使って見た目をごまかそうとする作戦を試みたというわけだ。

ショップではこれも噂に聞いていた通り、接客がとても親切丁寧。根気よくこちらのリクエストを聞いて、私が装着できそうなブラジャーを試着室まで運んできてくれる。そして、いざ試着の際にはビニール袋をした手で、背中、腹、脇から贅肉をかき集めて、形の良いバストを作ってくれる。

「お肉を寄せて集めて形状記憶させるんです。で、今よりもツンと上を向かせましょう。もちろん、苦しくないように設定しますので、ご安心くださいね」

あれこれとブラジャーの試着をして、さあ買うぞというタイミングで、店員さんは私にお題を与えてきた。

「お客様、下着はどのように洗っていますか?」
「今、ブラジャー専用の洗濯ネットがあるのでそれに入れて、洗濯機で洗っています」
「……!(驚いた顔)」
「その顔はやっぱり手洗いしろということですね」
「そうですね。洗濯機で洗うのは、ブラジャーにとって負担が大きいですし、何より傷みが早くなってしまいます。ご面倒でもまず、パッドを外して、ホックをつけて、ぬるま湯をためながら洗剤を入れて、泡を立てます。そこでしばらく放置してください。つけ置き洗いですね。で、10分くらいしたら洗剤を流します。その後、タオルに包んで吸水をしてください。水分がある程度取れたころに、形を整えて陰干しですね」
「ちなみにセットのショーツに関しては……」
「同じ手法で優しく洗っていただければ大丈夫です」

一連の説明を聞いていると、自分が傷んだブラジャーで胸を包んでいたことだけは理解ができた。下着の手洗いとは“洗う”だけで7工程近くもある。これに乾いた下着を取り入れて、収納する工程まで加わってくる。ネットに入れて、洗濯機でぐるんぐるん回して洗っていた怠惰おばさんとは、次元が違う。

店員さんの熱血指導を受けたその日から、私の下着手洗い習慣が始まった。洗濯機洗いと比べると、手間は比較できないほど面倒臭い。とはいえ下着が高額だったので、少しでも劣化させたくないという貧乏根性が、私を今日まで、手洗いに奮い立たせている。ただ汗をかかない冬場くらいはいいだろうと、ブラジャーを洗う頻度は3日1回にペースダウン。それが夏に向かって2日に1回となり、よく汗をかく時期になると、毎日手洗いするペースに戻っていく。

ちなみにショーツは毎回洗濯をしている。ブラジャーを3日使うなら、残り2日はセットアップではないコットンショーツの出番だ。下着屋で買った艶っぽいナイロンの下着よりも、コットンのほうが履き心地がいいと感じてしまうのは、中高年の証である。

もし男性がこのエッセイを読んでいたら知ってほしい。同じヒト科でありながら、女性はふたつの乳房があるために、出費も労力もかさんでいる。男性なら、下着はパンツ一枚で済むだろう。同情してくれる気持ちがあるのなら、ブラジャーに免じて一杯くらい奢ってほしい。