今、本当の意味での「開国」が日本に求められている
しかし、社会、経済、文化それぞれの分野では、その閾値超えに対する準備がまだできていません。
問題は日本だけでなく、世界各国に共通するものですが、とりわけ日本において注意すべきは、日本ではインバウンドが爆発的に増えるまで、本当の意味での「開国」を経験していなかったことにあります。
IT革命が本格化した20世紀末から世界の潮流は激変しましたが、日本は金融、通信、法律、行政、教育など、社会のあらゆる面で、システムのアップデートが遅れました。
既存の老朽化したシステムにサビが出て、埃がたまり、ガタが目立ち始めたところに、さまざまな国から、さまざまな人たちが、「旅行」「観光」という名目で流入。そのような入国インパクトを急に経験したことで、問題は一気に表面化しました。
自国に対する、外部からの有無をいわせぬ変化としての「開国」は、ほんの数年前に始まったばかりです。それが日本にとって、どれだけの衝撃であるかは、想像に難くありません。
それゆえ観光を有益な産業にするためには、十分な覚悟が必要となります。これまでとは違う対応、方策を、クリエイティブに考え、生み出していくことが重要になるのです。
※本稿は、『観光亡国論』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
『観光亡国論』(著:アレックス・カー、清野由美 中公新書ラクレ)
右肩上がりで増加する訪日外国人観光客。京都、富士山をはじめとする観光地へキャパシティを越えた観光客が殺到し、交通や景観、住環境などでトラブルが続発する状況になっている。本書は作家で古民家再生をプロデュースするアレックス・カー氏とジャーナリストの清野由美氏が、世界の事例を盛り込みながら、建設的な解決策を検討する一冊。真の観光立国を果たすべく、オーバーツーリズムから生じる問題を克服せよ!