コロナ禍を経た日本は再び「観光亡国」への道を歩んでしまうのかーー(写真提供:Photo AC)
新型コロナで減った訪日外国人観光客も今や急回復。日本政府観光局(JNTO)によれば、2023年10月の訪日客数は、コロナ流行前の19年同月を既に上回ったそう。しかしその急増により、混雑などのトラブルが再び散見しています。「オーバーツーリズム」という言葉も今や広く知られるようになりましたが、実際その影響に悩まされている日本に足りないものとは? 作家で古民家再生をプロデュースするアレックス・カー氏とジャーナリスト・清野由美氏が建設的な解決策を記した『観光亡国論』をもとに、その解決策を探ります。

京都の「町」を買い進める外国人

京都の町中ではこの数年、驚くべき事態が進んでいました。筆頭が、外国資本による「町」の買い占めです。

2018年には中国の投資会社「蛮子投資集団」による買収が話題になりました。当時のNHKの報道によれば、同集団は半年間に120軒もの不動産を買収したそうです(『かんさい熱視線』、18年6月29日)。

外国人が京都を好んで買い求めていたのはなぜでしょうか。

大前提として、続く観光ラッシュと、2020年東京オリンピック・パラリンピックなどをきっかけに、観光地の土地の需要と価値が高まっていた、という事情もあるでしょう。

その一方で、円安の状況が続いているため、外国人から見れば割安感がある、ということも考えられます。また日本は東アジアで珍しく、外国人が不動産を所有できることも大きいでしょう。

それらの要素は、地理的な距離が近い場所にいる中国人にとっては、とりわけ有利に働きます。経済発展とともに上海や北京など大都市では不動産の値上がりが激しく、もはやその価格は東京を凌ぐようになりました。ニューヨーク、サンフランシスコ、パリ、ロンドンなど欧米の主要都市も同じ状況です。

また、2019年以降、欧米ではユーチューバーの影響もあって、日本の古民家ブームが起こり、京都と東京近辺をはじめ、全国各地で欧米人が古民家を探して購入しています。今まで二束三文でも売れなかった地方の古民家を売買する“古民家”専門の不動産業者も目立ってきています。

要するに、日本は外国人にとって、「安くてお得な」不動産投資ができる場所になっているのです。

コロナ前の2018年から20年にかけて、国土交通省が発表する公示地価では、北海道のニセコ周辺と京都市内が大幅な地価上昇率を示しました。京都市内はもちろんのこと、ニセコはスキーリゾート地として外国人観光客に大人気の土地です。

京都の不動産を狙うのは、外国資本だけではありません。京都の市街地では、風情ある町並みの中に、内外の業者が安手のホテルを建設するパターンも増加しています。