「申し訳ない」なんて思わなくていい

佐光 日本の女性は家事に対して、「私がやらなきゃ」「ちゃんと」「きちんと」という思い込みやこだわりをもっている人が多いですよね。

くわばた 私もそのひとりです。

佐光 でもね、「女性は家事を完璧にこなさなければいけない」という刷り込みが始まったのは、多分、戦後からですよ。それより前の時代、商家や旧家の人たちは女中さんを雇って家事をしていたんですね。女中さんに指示を出すために、丁寧な家事のやり方は知っていたけれど、自分がやるわけじゃない。

くわばた そうなんだ。

佐光 それが戦後、使用人を雇う家は減り、核家族も増えた。そうしたなか、おかみさんと女中さん、両方の役割を一手に引き受けるようになったのが、専業主婦なんですね。きちんと家事をこなす女性は「主婦の鑑」なんて言われて。そういう母親を見て育った人たちも、「女性は家事をきちんとしなければ」と思う。

くわばた 私もそうですよ。それでなくとも、うちは両親が九州出身で、母はとにかく父を立てる。九州男児の父は家では何もしない王様で、家のことや子どものことは、すべて母がやるんです。母はパートで働いていましたから、共働きでも、家事は女がやるものと思ってましたね。

佐光 うちも、専業主婦の母が何もかもやっていました。父の身の回りのことも全部、母の担当。靴下まではかせていました。30年くらい前に父が脳梗塞で倒れたんですが、動けなくなって父はさぞ不自由だろうと思っていたら、何も生活は変わらない。本当に母まかせで、父は何もしてこなかったのね、と驚きました。もし先に倒れたのが母だったとしたら、父はまったく何もできないし、家庭崩壊でしたよね。うちに限らず、家事すべてを担う人が入院したりしたら、一大事ですよ。