かなりいい数字が出ている

清水:みなさんが携わっている「MUJIN書店システム」について、あらためて説明いただけますか?

向かって左が株式会社トーハン経営企画部部長・大塚正志さん、右が株式会社Nebraska代表取締役・藤本豊さん(写真:本社写真部)

藤本:山下書店世田谷店は夜7時から翌朝10時まで、メディアライン曙橋店は夜8時から翌朝11時までが無人営業で、それ以外は有人での営業を行っています。各店、無人営業開始の時間になると、自動ドアの前に立っただけではドアが開かなくなります。

清水:なるほど。

藤本:その店舗では、入り口のサイネージからQRコードを読み込み、初回は店舗のLINEアカウントと「お友達登録」を頂くとドアが開く仕組みとなっています。中に入ったあとは従来の本屋さんと同じですが、会計はセルフレジ、キャッシュレス決済のみの対応なのがその特徴です。

清水:無人だと万引きとかも増えそうですが……。そのあたりは、いかがでしょう。

藤本:当初からもちろん気にかけていて、無人営業を始めてからも確認しているのですが、日中と特に変化はない、というのが実際のところです。LINEアカウントを使わないと入店できないことが、ある意味で「デジタルの名札」になっているようで、セキュリティ面に一定の効果を発揮していると考えています。

MUJIN書店システムについて。LINEを使って入店し、キャッシュレスおよびセルフレジで会計を済ませる(提供:トーハン)

清水:無人である以上、徹底的に監視されている、という環境はお客さんもよくわかっているだろうし。特に治安が悪くないエリアであれば、問題なく成立しそう。導入した2店の売上はいかがですか?

大塚:かなりいい数字が出ています。山下書店世田谷店の実証実験期間(約4か月間)では、全国書店の売上前年比が94.5%のところ、106.6%と大きく上回る結果を挙げました。ただ今回の無人販売の試みは、この2店単体のものというより、ほかの書店さんで広げられないか、との意味合いが強いもので。年々経営が厳しくなっている本屋さんの生き残りの道を模索する「実験」でもあります。

清水:実験。

大塚:そもそもですが、書店において収支を改善する方法は限定的で、売上アップかコストカットの二つしかない。その意味で、今は営業していない時間帯に売り上げを作り、伸ばせたら、ということは以前から考えていて。方法を模索していたところにNebraskaさんからご提案をいただいた、ということになります。

藤本:もともと私と横山(Nebraska共同代表)ともに、本屋さんが大好きで。本屋さんのために何かできることはないかを検討し、具体化していくうちに本気になって二人でNebraskaを起業。この事業を手掛けるに至りました。当初、書評をシェアするSNSなども考えたのですが、無人化システムがやはり本屋さんの経営改善に直結すると。関わる私たちのビジネスとしても成立すると考えて、注力してきました。