あらゆるものごとは幸せな方に流れていく

大塚:コロナを経て、本屋さんの営業時間短縮が進んだのは事実だと思います。以前22時まで開いていたのを20時で閉める、といったお店が増えました。その流れに人不足が加わり、営業時間を戻せないまま、という書店さんがとても多い。

清水:前提として、負担が軽減される方向で一度変わったものが、もとに戻るのは困難。経営していた会社でも、リモートワーク導入後に、そのまま遠方へ引っ越したままの社員が多く…。コロナの流行を機会に、仕事や生活が楽な方、あるいは良い方に変わった部分もあったわけです。

編集:確かに以前は22時まで店を開けていられた。でもそれは、何かを犠牲にして成り立っていたのかもしれない。

清水:あらゆるものごとは、より幸せな方へ流れていく。その結果として、時短や自動化に流れたなら、それはやむを得ない。でもそれで、やりたくないけど、やらざるを得なかった仕事が減るのなら…至極まっとうなことと思います。余裕ができた分、クリエイティブな仕事や新しいことにチャレンジしたり、困っている人を助けるために時間を使えたなら、やっぱり幸せなんじゃないかな? だから、無人化が進むのをポジティブに捉えたいですよね。パートさんを減らす、とかそういうことではなく。セルフレジなんか、その典型かも。

編集:セルフレジ、書店さんでも導入店舗が増えていますよね。このままレジが高機能になっていけば、現場の業務負担軽減はもちろん、データ集積もより進んでいくのでは?

山下書店世田谷店に設置されたセルフレジ。無人販売時の会計はここで(写真提供:トーハン)

大塚:多くの書店は「スリップ」による在庫管理から、すでに「POSデータ」管理に切り替わっているので、その意味で、かなり利便性は高くなっていると思います。ただし、これからより集約が進んで、どの地域のどの時間に、どういった本が誰相手にどれくらい売れたか、といった細かいデータ集積や分析がより進んでいくのは間違いないでしょうね。

編集:街そのもののデータのハブとして、書店がその価値や存在感を高めていく。そうなるといいですよね。