メディアライン曙橋店。「MUJIN書店システム」を導入し、23年より夜間の無人販売を行っている(写真提供:Photo AC)
減り続ける街の本屋さん。日本出版インフラセンターによると、2003年には20,880店あった書店数も、22年には11,495店と約半分に。町から本屋の灯を失わないために、できることはもうないのか――。プログラマーで実業家の清水亮さんとその方法を探る当連載、今回は書店の無人営業「MUJIN書店システム」を展開中の株式会社トーハン・株式会社Nebraskaのご担当者に話を聞いていきます。

紙の本を残す唯一の方法とは

◆前編はこちら

*以下
株式会社トーハン経営企画部部長 大塚正志さん=大塚
株式会社Nebraska代表取締役 藤本豊さん=藤本
清水亮さん=清水 
「婦人公論.jp」編集部=編集

清水:夜間の書籍無人販売「MUJIN書店システム」を中心に、お話を聞いてきました。ここまでポジティブな部分がありつつ、現状維持するための試行錯誤、という面を強く感じています。大塚さんは書店経営の現状をどう感じていますか?

大塚:前提として、いつか紙の本を取り巻くあれこれは、いずれ下げ止まると思います。96年に出版物の売り上げがピークを迎えてから、約30年にわたって、右肩下がりがここまで続いてきたわけですが、反面、底堅い紙の本の需要があることを強く感じています。ですので、その下り坂が落ち着く底まで、何とか業界として生き残りたい、というのが我々に共通する想いでもあります。

清水:なるほど。

大塚:なお下り坂の途中では、多くの本屋さんが消えていくのを見届けてきたわけですが、同時に無くなったお店が抱えていたお客さんがその後どうなるのか、という点に注目してきました。

清水:どうでした?

大塚:ハッキリしたのは、無くなる書店に100人のお客さんがついていたとして、100名がそのまま周辺店に散るわけではない、ということ。本を買う必要に迫られている50名は散ったとしても、残りの50名は本を買う生活習慣ごと失い、そのまま消えてしまう。やはり店舗にアクセスし、実際に手に取ることで初めて買う習慣が生まれるわけです。ですので、街に本屋を残すことこそ、紙の本を残す唯一の方法だとあらためて思っています。それで本屋さんを残すためになにができるか、と検討を続けてきたことが、今回の「無人書店」の試みとリンクしてくるわけです。