何が起きてもいい場所

連載はあえて体裁を決めず、何が起きてもいい場所という意味を込めて「BLANK PAGE」と名付けました。第1回に母にまつわるエッセイを書いた後、人と出会いたいという思いがむくむく湧き上がり、何年かに一度対談でご一緒していた谷川俊太郎さんにお会いすることにしたのです。

谷川さんとお話しするうちに、「こんなふうに人と出会うことを連載の軸にしたい」と思うようになりました。次は小泉今日子さん、それから中野信子さん……と、自然に会いたい人が浮かんで、最後のシャルロット・ゲンズブールさんまで続けました。

連載中、自分のなかにずっとモヤみたいなものがあったのです。本にするためにまとめて読み返して、当時の自分は人と話すことでそのモヤを晴らしたかったのかも、と思いました。

モヤの先の光を見るためには、自分の、そして相手の影の部分にも対峙しないといけないんですね。それぞれの対話は意図せず「喪失」を共通テーマに進みましたが、それは私のなかのモヤが両親の死から派生したものだったからかもしれません。

誰しも人生のなかで、心が立ち止まってしまう瞬間や、思い出すとちょっとチクチクする古傷があるはず。それを一期一会の人と共有するうち、「私もこんな痛み方でいいんだ」とか「さっと脱ぎ捨てて前に向かっていこう」と思えるようになっていったのです。

15人のお相手のうちほとんどは、編集者は同行せず一人で会いに行きました。一対一で出会ったほうが、素のままに交流できると感じたからです。

 

『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』(内田也哉子:著/文芸春秋)