「俺このまま死んだら誰も気づかない」

──その「死ぬ間際にどう人生振り返るか」っていう言葉はまだ小倉さんの中に残ってるんですね。

残ってるね。今になって、それが真理なのかも分かんないと思うよね。本当にその時々で、幸せだ、好きな人と一緒にいて嬉しいなって思うときはあるし、仕事が順調で、経済的にも楽になって好きなことができて、俺って幸せだよなって思うこともそれはありますよね。

そういうのがないと、人間、仕事なんかやってけないからさ。でも、それを後になって振り返ったときに、あのときは本当に幸せだったんだろうかって、いろんなことを思い始めるんだよね。

未来がないから、過去を振り返るしかしょうがないのかな。僕みたいに楽観的で前向きな人間が、こういうふうになっちゃうっていうのがまず信じられない。

だって一人で風呂入ってて、“俺このまま死んだら誰も気づかないな”とかって思うこともあるんだから。

 

※本稿は、『本音』(新潮社)の一部を再編集したものです


本音』(著:小倉智昭、古市憲寿/新潮社)

「小倉智昭」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか? 舌鋒の鋭さ、ふてぶてしさ? でも、その実人生はアップダウンの連続です。吃音(きつおん)だった少年時代、局アナからフリーに転じた後の貧乏暮らし、22年にも及んだ「とくダネ!」MC、がん闘病……そんな「まさか」の人生を、「とくダネ!」コメンテイターで年の離れた友人・古市憲寿さんを聞き手に振り返ります。驚きのエピソード、イメージとは違う意外な面が続々!