「俺このまま死んだら誰も気づかない」

──その「死ぬ間際にどう人生振り返るか」っていう言葉はまだ小倉さんの中に残ってるんですね。

残ってるね。今になって、それが真理なのかも分かんないと思うよね。本当にその時々で、幸せだ、好きな人と一緒にいて嬉しいなって思うときはあるし、仕事が順調で、経済的にも楽になって好きなことができて、俺って幸せだよなって思うこともそれはありますよね。

そういうのがないと、人間、仕事なんかやってけないからさ。でも、それを後になって振り返ったときに、あのときは本当に幸せだったんだろうかって、いろんなことを思い始めるんだよね。

未来がないから、過去を振り返るしかしょうがないのかな。僕みたいに楽観的で前向きな人間が、こういうふうになっちゃうっていうのがまず信じられない。

だって一人で風呂入ってて、“俺このまま死んだら誰も気づかないな”とかって思うこともあるんだから。

 

※本稿は、『本音』(新潮社)の一部を再編集したものです

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本音』(著:小倉智昭、古市憲寿/新潮社)

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