小倉さんが人生を振り返った著書『本音』で、聞き手を務めた古市憲寿さん(提供:新潮社)
22年間にわたり朝の情報番組『とくダネ!』でMCを続け、朝の顔として活躍した小倉智昭さん。2016年に膀胱がんを宣告された後、肺への転移も見つかる中で、活動休止と再開を繰り返しながら闘病生活を続けてきました。そして2024年2月、『とくダネ!』のコメンテイターで友人でもある古市憲寿さんを聞き手に、小倉さんが人生を振り返った『本音』(新潮社)が刊行に。今回は、がんを患って三途の川まで見たという小倉さんが、今後の人生について感じていることをご紹介します。

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海外は身体が言うことを聞くうちに

(太字:古市さん)
──趣味の物に埋もれて暮らすのは、理想の隠居だとは思えないですか。

これは理想の隠居じゃないね。僕の考え方も変わってきているんだと思います。

老後の楽しみなんて本当に思い描いているほど楽しかないよ、って言いたいよ。お金を子どものために使うとか、老後のために、二人のために使うとかっていって残すのもいいのかもしれませんけど、それよりも若いうちにやれることがあったら、やったほうがいい。

だって、海外なんて体が言うこと聞くうちに行かないと。今、僕に海外行けったって行けないもん。歩くのもきついしさ。ワインのおいしいとこ行ったって、自由に飲めないわけじゃない。

かみさんは、「私は母のことがあるから行けないから一人で行ったら」とまで言うんですよ。「今こそあなたの好きな人と行ったら楽しいと思うわよ」だって。

でも今この体だから何もできねえだろう。そんなとこに好きな人と行ったって嫌われるだけだという……。