「私にはわかりません」

この分野にまだしも明るいのは経済学者や経済アナリストだろうが、彼らがほかの職業の人と比べてお金持ちだという証拠はどこにもない。

経済予測の特別な能力をもっていれば、経済番組に出演して景気予測をしたりはしないだろう。おそらく静かに関連商品を売って、大学やテレビ局を所有し、あらゆる事業の大株主になっているはずだ。

たまに正確な予測をして有名になる人もいるが、その人の予測が再び当たる確率はさほど高くはない。コインを投げてその裏表を当てた人が、続けて当てられるわけではないのと同じ理屈だ。

彼らの発言よりも恐ろしいのは、彼らの意見を信じて全財産をかけてしまう人たちだ。

『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(著:キム・スンホ 、翻訳:吉川南/サンマーク出版)

誰も明日の株価がどうなるかはわからない。経営者である私も、自分の会社が来年どうなっているかわからない。専門家がその権威をもって金利や株価の変動について語っても、それはあくまでその人の意見であって、ほかの誰かの意見より重要なわけではない。

だから賢明な投資家や専門家は、「この株価は上がりますか」「債券市場はどうなりますか」「これから反発しますか、さらに下落しますか」などと聞かれたら、こう答えるものだ。

「私にはわかりません」

「わかりません」が正解なのは、未来とは過去のデータの枠内で作られるものではなく、新たに訪れた未来がこれまでのデータに合流するからだ。そのため規則性は存在せず、つねに予想外のことが起こるのだ。