セミナーに登壇した中川恵一氏
2024年2月14日、がん対策の普及促進を目指す「がん対策推進企業アクション」(厚生労働省委託事業)により、「日本人の起源とがん」および「子宮頸がんとHPVワクチン」をテーマにしたメディア向けセミナーが開催されました。登壇者の中川恵一氏(東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授)による講演の内容をお伝えします。
この記事の目次
がんの県民性
縄文系・弥生系のがんリスク 子宮頸がんとHPVの関連性

がんの県民性

日本では、地域によって多いがんと少ないがんがあります。

<胃がんは秋田県などに多い>

秋田県などでは、練ウニやいくらのような濃い塩分を含んだ塩蔵品がよく食べられるため、胃がんの人が多く見られます。

また、胃がんにはピロリ菌も関係しており、「ピロリ菌感染+過剰な塩分摂取」により発症しやすくなるとされています。動物実験でも、ピロリ菌に感染したネズミに塩分の高い餌をあげると胃がん発生率がどんどん上がっていく結果が出ています。

そのため、胃がんのリスクを減らすには減塩やピロリ菌の検査、陽性者への除菌などが有効となります。

<肝臓がんは佐賀県などに多い>

佐賀県は全国でも特に肝臓がんの死亡率が高い県です。その理由は、肝臓がんの原因の7~8割を占めるC型・B型の肝炎ウイルスのうち、佐賀県一帯の東シナ海周辺にC型肝炎ウイルスが多いためだと考えられています。

ただ、C型肝炎ウイルスに感染しても、飲み薬で95%以上の人が排除できるとされています。またB型肝炎ウイルスも、飲み薬によるコントロールが可能です。

ピロリ菌同様に、肝炎ウイルスも感染の有無を検査することが重要となります。

<乳がんは東京など(都会)に多い>

乳がんは、女性特有のがんの中で最も罹患率が高いがんで、東京などで多く見られます。

原因は少子化です。女性は妊娠・出産により生理が止まり、その間は女性ホルモンによる刺激がぐんと減りますが、子沢山だった昔とは異なり、今は1人も子どもを産まない人が多くなりました。

さらに、昔よりも栄養状態が良くなったことで、初潮が早く、閉経が遅くなったこともあって、長い間ずっと女性ホルモンの影響を受け続けるという状況になっています。

これが乳がんのリスクを非常に高めており、出生率が低い東京で特に乳がんが多い理由と考えられています。