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がんの県民性 縄文系・弥生系のがんリスク
子宮頸がんとHPVの関連性

子宮頸がんとHPVの関連性

<子宮頸がんとは>

子宮は子宮体部と子宮頚部からできていて、それぞれ別の臓器です。子宮体がんは乳がんに近いもので、女性ホルモンによって増えるがんです。一方子宮頸がんは性交渉にともなうHPV(ヒトパピローマウイルス)感染によるものです。子宮頸がんの罹患率は先進国の中で日本だけが上がっており、大きな問題です。

HPVは、性経験のある女性の7~8割が経験するありふれたウイルスでほとんどは排除されますが、一部残り、わずかな確率ですが、がんになります。子宮頸がんの発症にはこのウイルスの存在が欠かせないので、性経験をもたない女性は基本的には罹りません。

<HPVワクチンについて>

子宮頸がんのHPVには非常に多くのタイプがあり、がんをつくる「高リスク型」もあれば、がんをつくらない「低リスク型」もあります。

高リスク型のなかでも、特に「16型」と「18型」は子宮頸がんの発症原因の3分の2を占めます。さらに、その他の高リスク型のものも合わせると子宮頸がんの発症原因の88.2%にもなりますが、それらのウイルスはワクチンによってブロックすることができます。

HPVワクチンというのは、発がん性を含まないHPVの殻です。この殻を事前に注射しておくと抗体ができ、本物のウイルスがやってきてもこの抗体が攻撃してくれます。

HPVワクチンは、含まれるウイルスの型によって、2価、4価、9価となっており、2価、4価のワクチンで子宮頸がんの65%、9価なら9割を予防できます。接種年齢ごとの発症比率では、接種なしを100とすると、10~17歳の接種で88%減少しますが、17~30歳になると 53%の減少にとどまります。

ワクチンには、感染したウイルスを排除する力はなく感染を予防するものなので、性交渉をする前にワクチンを打たなければなりません。

 

2月14日に開催されたセミナーの様子

<HPVワクチンのキャッチアップ接種>

日本は、国際的にみるとHPVワクチンの接種率が低くなっており、結果的に罹患率が高くなっています。そこで国は、HPVワクチンの接種を逃した人たちのために、公費でワクチンを接種できる「キャッチアップ接種」を行っています。

対象となるのは、1997年度生まれ~2006年度生まれ(1997年4月2日~2007年4月1日生まれ)の女性です。

このキャッチアップ接種は2025年3月までとなっていますが、HPVワクチンは決められた間隔をあけて合計3回接種する必要があり、3回分の接種を終えるのに6ヵ月かかります。そのため接種を希望する場合は、今年の9月までに1回目を打っておく必要があります。

<登壇者>
東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 特任教授 中川恵一