動物の顔の違いは大きな違いがないとわかりづらい
次の図を見てください。
男性2人の顔はまったく別人の顔であることはすぐにわかると思います。一方、2匹のサルの顔は、互いが似ているように見えないでしょうか。
大人の場合、自分と同じ種である人間の顔の識別は、得意中の得意です。目の位置をほんのわずかに変えただけで、まったくの別人に感じるほどです。
一方、人間以外の動物の顔の違いは、よほど大きな違いがないとわかりづらいのです。これは経験が生み出す差なのでしょうか。
それを調べるために、彼らは、サルの顔の写真と人間の顔の写真を使って、顔の個体識別能力を赤ちゃんと大人で比べてみました。
実験のやり方は、まず顔Aを提示し、それを十分な時間見てもらいます。そのあとで、顔Aと顔Bを同時に提示し、どちらを見る時間が長いかを調べるというものです。
一般的に、赤ちゃんも大人も新奇な刺激が与えられると、そちらを見る時間が長くなるので、顔Aと顔Bを見分けることができていたならば、顔Bを見る時間が長くなります。一方、2つの顔を見分けることができていない場合は、顔Aと顔Bを見る時間の間に差がなくなるはずです。
その結果、大人は、人間の顔のAとB(この研究では、西洋人の顔を表示し、参加者も西洋人)は正しく見分けていましたが、サルの顔AとBは見分けられませんでした。
また生後9ヵ月の赤ちゃんも、大人と同じように人間の顔は見分けられましたが、サルの顔は見分けられていませんでした。
ところが、生後6ヵ月の赤ちゃんは、人間の顔だけでなく、サルの顔も見分けることができていたのです。つまり、生後6ヵ月の赤ちゃんは自分と違う種の顔も見分けられるのに、成長するとそれができなくなってしまうのです。