LとRの聞き分けと同じ――知覚狭窄

この結果に驚いた方もいるかもしれませんが、実は認知発達の分野ではよく観察される、「知覚狭窄(Perceptual Narrowing)」と呼ばれる現象です。

一番有名な知覚狭窄の例は、生後6ヵ月の日本の赤ちゃんは、英語のLとRの音を聞き分けられるのに、生後10ヵ月を過ぎると聞き分けられなくなるというものです。いわんや、大人も然りです。

これは、日本語にLとRを分けるような子音がないため、日本語の学習が進むと、無関係な情報は識別しないようになるからなのです。

この知覚狭窄の現象からわかることは、私たちの脳は、最初は幅広い項目の大まかな分類を学習し、そこから、自分にとって重要な特定の項目の、より細かい識別に特化して学習していくということです。

脳の大きさは有限ですので、その専門化した情報以外には脳のリソースを割かないよう、生後1年もしないうちに神経ネットワークの最適化が始まっているのでしょう。

 

『顔に取り憑かれた脳』(著:中野珠実/講談社)