その後、管轄する窓口での対応は変わったのか。高齢者の運転に関する記事を執筆するたび、各地の運転免許センターや警察署に、「親の免許を返納させたい家族」として問い合わせてみる。

しかし残念なことに、電話に出た人が相談窓口を知らなかったり、担当者と話しても公安委員会への診断書提出に話が及ばないなど、解決にたどりつけないこともある。

認知症高齢者の運転に関する相談窓口や相談方法を確認しようと、警視庁運転免許本部に話を聞いた。東京都の場合は都内の運転免許試験場の「適性相談窓口」か、各警察署の交通課(交通総務係)がその相談を担当しており、電話でも、直接訪れてもいいのだという。相談時には、ドライバーの現状と行動を明確に伝えることが大切で、状況に応じて、地域のサポート医などを紹介してくれることもあるそうだ。

「認知症と診断され、そのうえ車にたくさんの傷がついているなど、運転してはいけない状態なのに、家族や周囲の説得にも耳を貸さない。そんな方が車で出かけてしまえば、重大な事故を起こす可能性が高くなる。事情を伺い緊急性が高いと思われる場合には、こちらから出向いて本人を説得することもあります」

もし警察の方が来てくれたら、これほど心強いことはない。

この2年で父の認知症は進み、転んだ際に額に大怪我もした。認知症患者との毎日は、想像を超えることが次から次へと起こるが、そのたびに私は思う。

長く苦しい1年だったが、あの時運転をやめてくれたおかげで、父は人様を巻き込まずに済んだのだ。本当によかった、と。

 

各都道府県の運転適性相談窓口

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運転適性相談窓口一覧表(PDF)
http://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/pdf/contactpoints.pdf
※今年度内に全国共通の4桁統一ダイヤルを設置する予定