次の人に使ってもらうと考える
問題は、書類や資料など本の整理でした。こちらは手にとると、過去を思い出すからです。
「この本は、出版当初はお金がなくて買えず、先輩に貸してもらっていたけれど、がんばって仕事をしてようやく自分で買えた」とか、「この書類は必死で書いた本のために集めた資料だ」とか、仕事の一場面、一場面が浮かびあがってくるのです。
私にとって本や書類は、まさに人生の一部。それらを捨てるなんて身を引きちぎられるようなつらい気持ちになりました。
しかし、いつまでも捨てられないと引きずっていては、引っ越しができません。発想を転換し、今後だれかのお役に立てるならと、古本屋に買い取ってもらったほか、世界名作全集などは「子どもに読ませたい」という人に譲りました。おかげで心が少し軽くなりました。
とはいえ、減らせたのは全体の4分の1程度。娘に命じられた「半分」にはとても到達しませんでした。
本というのは、何かを調べたいと思ったとき、すぐ開けるよう身近に置いておきたいものです。「これは手放してもいいだろうか?」「手元に残したほうがいいのでは?」などと考えているうちに、体力も気力も消耗していきます。それに、どうしても手放せないものだってある。片づけているうちに疲労困憊し、判断する気力もなくなっていきました。
そういうものに関してはあきらめ、片づけきれなかった本や書類は、「〝私有物処理費〟を遺産に上乗せするから、お願い!」と、最終的には娘に任せることにしました。